琉球大学 質の高い臨床教育・研究の確保事業

教育プロジェクト安全な処方のための
シミュレーション教育

このプロジェクトでは、研修医が安全に薬を処方する方法を学ぶためのコンピューターベースのトレーニング(CBT)教材を作成します。この教材は臨床実習を補完するもので、仮想の臨床シナリオを使い、現実の臨床現場で経験する多様な症例や状況を仮想的に経験することができます。研修医が実際の患者さんに対応する前に、必要なスキルを習得できることを目指しています。

医学部生向けの教育ツールだね

背景と目的

  • これまでの臨床実習では、安全で適切な薬の処方に関する教育が十分とは言えませんでした。特に、医学生が実際に薬を処方することは、法律によって医師の行う医療行為から除外されているため、実習の中でこの経験をすることは困難でした。

    また、新しい薬の開発や高齢化社会の進行により、複数の薬を同時に使う患者さんが増えています。これに対応するため、研修医は患者さんに害を及ぼさない安全な処方を学ぶ必要があります。

    琉球大学では、全国でも限られた臨床薬理学講座を擁する大学として、これまでにもEBM(根拠に基づく医療)や適切な処方に関する教育に重点を置いてきました。大学改革推進事業の一環として、診療参加型臨床実習を実施してきました。
    今回のプロジェクトは、これらの取り組みを発展させ、参加型臨床実習を補完し充実させるものです。研修医が仮想の臨床シナリオを通じて幅広いケースの処方を学ぶことができれば、短期間でより高度なスキルを習得できます。患者さんに最も近い初期研修医として、患者さんに害を与えない安全な処方ができるようになり、正しい薬物治療についての情報を提供することができるようになります。

    医学生は実習で薬を処方できないから
    仮想体験してもらうんだ

  • 今回のプロジェクトの成果を公表し、他大学へも普及していくことで、日本全体の初期研修医のスキルアップに貢献したいと考えています。そうなれば各地の医療現場での医師の負担も減り、患者さんへもより質の高い医療を提供できるようになるでしょう。そして臨床研究の大切さが再認識されて、もう1つのプロジェクトである「質の高い臨床研究の確保」にもつながると考えています。

事業計画と実施内容

  • 令和5年

    • 事業推進委員会設立
    • 外部評価委員会を設立
    • CBT症例シナリオ作成委員会を設置
    • CBT症例シナリオ査読委員会を設置
    • CBT形式の仮想症例シナリオ作成と査読
  • 令和6年

    • CBTシミュレーション処方実習テストトライアルと改善
    • 症例シナリオ作成
  • 令和7年

    • 症例シナリオ作成継続
    • CBTシミュレーション処方実習 (M4〜M6を対象)
    • 他大学への紹介

3年かけてテスト問題とツールを作成して、他大学へも紹介する予定だよ

  • 対象学生

    医学部2年生(M2)〜6年生(M6)を対象とする。M4までに講座やオリエンテーションで知識を学び、M5からCBTを実施。M6では全領域を網羅した120分、60問のCBTを受けてもらう。

  • 学習内容

    1. 処方(用法用量、期間)のオーダーリングシステムシミュレーション。
    2. 処方のレビュー(問題のある処方の同定)。
    3. 投与量の算出が必要な薬剤の用量設定。
    4. 患者さんへの新規開始薬剤や副作用の説明。
    5. 副作用への対応。
    6. 薬剤が効いているかの判定や関連する検査値の解釈。
    ※初期研修医の開始時点で知っておくべき内容に限定。
  • CBTの作成者

    本学の臨床薬理学講座を中心に、各診療科、外部の臨床薬理専門医、他大学臨床薬理学講座の教員が連携して作成。

  • 作成プロセス

    作成前にワークショップを開催し、レベルや問題形式を共有。
    作成後は外部委員による査読とブラッシュアップ。

外部の人たちにも協力してもらって、
テスト問題を洗練させていくよ